2016.05.05 Thu
#Osaka
【インタビュー】N.ハリウッド尾花大輔 × MIKITYPE
これは面白いなと。すぐに点と点が繋がりましたね。
『ミスターハリウッド大阪』のオープン以来、約1年振りに尾花さんとお会いした。程良い緊張感に懐かしさを覚えつつ、今回はショップ3階のギャラリースペース『the newly』での個展のため在廊していた、カリグラファーのMIKITYPEさんを交えながら話を伺った。お題は、ちょうど今ショップに並んでいる両者のコラボレーションについて。<N.ハリウッド>が、この弱冠23歳の気鋭アーティストをパートナーに選んだワケとは。
尾花大輔(敬称略、以下O)「今シーズン、タイポグラフィーにまつわるコレクションを展開しているんですが、その構想を練っていた時期にモデルハントのために、マンハッタンのクーパー・ユニオンというアート系の大学に行ってみたんです。1年半くらい前かな。面白い学生ばかりで、一体この学校は何なんだと(笑)。そうしたらハーブ・ルバーリンというタイポグラフィーの神様のような人の出身校で。いわゆるアヴァンギャルドゴシックとか、みんなが知っているフォントを作った人。彼の遺作を見てもらい、親族の方とも話をし、「もし良かったら使ってもらってもいいわよ」と言っていただいて。非常にありがたい話なんだけど、故人ではなく現代のアーティストで文字にまつわる活動をしている人いないかなと思っていた時に、彼のインスタを見たんですよね。惹き込まれましたね。特にボディペイントが面白いなと(※MIKITYPEさんのHP参照)。こういったTシャツがあれば面白いよなって、すぐに点と点が繋がりました。そうこうしている矢先に『The POOL Aoyama』からコラボレーションの話をいただいて、藤原ヒロシさんと一緒にリメイクのMA-1を作りました。その袖に、MIKIくんのタイポグラフィーをプリントしたのが最初ですね。そこから今回のコラボレーションに発展した感じだよね?」。
MIKITYPE(敬称略、以下M)「はい、そうですね。ちょうど尾花さんから今回のお話をいただいたのが、大学の卒業制作の時期と同じタイミングで。卒業制作で取り組んでいたような均一の面で描いた場合、印刷に思われることが多々あったので、コラボレーションの方は“文字に時間を与える”ようなイメージでバルサ材などを使って描きました。美術大学に入る頃からキレイな作品を作りたいという想いがあって。その美しさを表現するのに、ファッションはトップに位置するものだと思っていたので、お話をいただいた時は嬉しかったです。『The POOL Aoyama』のMA-1もそうですが、実際に服を目にした瞬間は本当に感動しました」。
名前×名前のコラボレーションではなく、彼の作品性を最大限に活かすというのが大事
—<マウンテンハードウエア>、<コンバース アディクト>、<VANS>、<ニューバランス>、<チャンピオン>、<ワイルドシングス>、<グレンロイヤル>、<吉田カバン>、<ジョン スメドレー>、<カシオ>のG-SHOCKなどなど。尾花さんは錚々たるブランドとコラボレーションを展開してこられました。今回はブランドではなく個人のアーティストということで、これまでとは違った考えで向き合われていたのでしょうか。
O「そうですね。基本的に自分がモノを作る側なので、アーティスト×アーティストみたいなのが少し苦手で。アーティストに何かをお願いする場合、大前提としてその人をリスペクトする必要があるわけじゃないですか。そうなった時に、『あ~、俺の方向性と全然違うわ』となることが怖いんですよ。アメリカを中心とした老舗ブランドとのコラボで僕の考えを投影することはあっても、アーティストと一つずつ組み立てていくようなのはほとんどなかった。初めてに近いことでしたね」。
—なるほど。確かに個人×個人となると、着地点に到達するまでがすごく難しそうな気がします。今やファッションに限らず星の数ほどのコラボレーションが存在していますが、そんななかにおいて特に意識されたことはありますか。
O「今回、MIKIくんにはAからZまでのカリグラフィーを数パターンあげてもらいました。彼の作品のなかでもいろんなスタイルがあるので。そこから絞り込ませてもらったうえで、それをパーツとして使わせてもらいました。何だろう、アーティストに『じゃあ、よろしくお願いします』と言ってそこからあげてくれたものを単に洋服に乗せるだけっていのは違和感があるんですよね。今言ったみたいに、『こっちで素材としてきっちり活かすよ』というのが本当のコラボレーションだと思いますね。そもそも名前×名前のコラボレーションはあまり好きじゃないし、MIKIくんの文字を利用するのではなく、日々アーティストとして活動している彼の作品性を最大限に活かすというのが大事。あとは今回もそうですけど、組みたい時に組むのとは違って。どのブランドと進める時もこのシーズンじゃないと意味がないというのがあります」。
—先にシーズンごとのテーマや全体の構想が尾花さんのなかにあって、“コラボありき”ではないと。
O「そうです。例えばコラボの話をいただいても、その時のタイミングではなかったら申し訳ないですが2年後にとか、逆に今すぐというのもありますね。もちろん、僕らからアプローチすることもあります。MIKIくんとの話でいうと、<VANS>と一緒にやらないと意味がないというか、話が成立しなくて。<VANS>のスニーカーのサイドテープのところにMIKIくんのカリグラフィーを描いているものがあるんですけど、ほかのブランドだとラインが入っていたりして描けないわけです。だから<VANS>じゃないと完結しない」。
※サイドテープのほかに、シューレースや中敷きにもMIKITYPEさんのカリグラフィーが描かれている。
—その時々のコレクションにマッチしているのか、なおかつそのブランドと組むことに意味があるのかを精査されているんですね。ついつい尾花さんばかりに聞いてしまいましたが、最後にMIKITYPEさんに<N.ハリウッド>とのコラボレーション、それに初の個展『Drawing』を経験されたうえでの今後の目標を聞かせてください。
M「自分のアート作品を世の中に出すのが学生時代からの目標でした。今後も自分らしい一枚絵をどんどん広げていきたいと思っています。それに海外では手で墓石を掘ったりしているアーティストがいるんですけど、平面だけでなくそういった立体にも挑戦していきたいですね。もちろん、今回のようなファッションとの取り組みも続けていけたらと思っています」。
<プロフィール>
N.ハリウッド デザイナー
尾花大輔
95年に今はなき伝説的古着店『ゴーゲッター』の立ち上げに携わり、長らくバイヤーとして活躍。00年より<N.ハリウッド>をスタートし、全ラインのタクトを振るう。昨夏に本店のある東京、コレクションの舞台であるNYに続く第3の拠点として大阪店をオープン。
カリグラファー
MIKITYPE
92年札幌生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科在学中に日本屈指のカリグラファー、三戸美奈子氏のもとで学び始める。16年春夏、自身のテキスタイルデザインを用いた<N.ハリウッド>とのコラボレーションアイテムを発表。初の個展『Drawing』も開催。
『Drawing』
会期:~5月8日(日)
会場:『the newly』
大阪市西区南堀江1-14-5 Mister hollywood OSAKA 3F
tel : 06-6710-9600
開廊時間 : 12:00~20:00
※プリントTシャツ、iPhoneケース販売
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