2019.11.27 Wed
#Kansai
「すべてが自然に繋がっていた」 —— 関西で出会った11人のアーティスト・コレクティブ、Soulflexの軌跡
関西を拠点とし、音楽のみならず写真や絵画など様々なフィールドで活躍するアーティストが集う11人組・Soulflex。彼らが届ける音楽は、アプローチの幅が広く多様なサウンドが揃っており、肩の力を抜いて感覚的に楽しめる心地いい楽曲ばかりだ。シンガーソングライターのSIRUPや、香取慎吾などの楽曲を手がけるプロデューサーのMori Zentaroを擁することで知られるが、それぞれのメンバーがどのように出会い、互いの何に惹かれて今に至るのか。結成10周年を目前に控えるSoulflexからMori Zentaro、KenT(Sax)、Ma-Nu(Rap)を迎え、インタビューを行った。
Interview / Natsumi Kawashima
Photo / Makiko Takemura
—— 以前、SoulflexのメンバーであるSIRUPにインタビューをさせていただいた際にもお伺いしたのですが、来年Soulflexが10周年を迎えるということで、改めて結成のきっかけをお聞かせください。
Mori Zentaro (以下、Zentaro):僕らの出会いは12〜13年前まで遡ります。当初、僕は弾き語りをしていたんですが、とあるイベントでKYOtaro(現在のSIRUP)と出会ったんです。お互いのステージを観て通ずるものを感じて、後日KYOtaroからmixiを通じて「一緒に何かやりませんか?」と連絡がありました。次に会った日、すぐにKYOtaroの“Heart Beat”という曲ができて、それ以降僕が楽曲を作って彼が歌うという流れが生まれました。同時期に、別の場所でMa-Nu (Rap)、RaB (Dr.)、Funky-D (Ba.)が在籍しているRaw-Fidelityというヒップホップバンドに出会いました。彼らがライブをしたイベントで僕がDJをしていたんですが、僕がかけていた音楽にMa-Nuが反応してくれて。
Ma-Nu:Zentaroに出会った日、彼がRomancrewをサンプリングした曲をかけてて「おっ!」と思ったんですよね。
Zentaro : 僕も同世代のヒップホップバンドに出会えたのが嬉しくて、自分のデモテープを渡したら後日連絡をくれました。当時、KYOtaroのライブをバンドセットでやる計画があったので、「ドラムはRaw-FidelityのRaBに叩いてもらおう!」という話になって、KYOtaroとRaBを引き合わせてライブをやったんです。KYOtaroからは「ZINっていう素晴らしいシンガーがいる」という話を聞いていたんですが、後に僕も出会うことができて、ものすごいシンパシーを感じたので一緒に音楽をやることになって。2013年にSoulflexとして初めての音源を発表した直後に、ZINがやっていたバンドのメンバーだったKenT (Sax)と、木村華子 (フォトグラファー)、hitch (ペインター)が加入して現体制になりました。
Ma-Nu:メンバーそれぞれが加入したタイミングに僅かな差はあるものの、いつSoulflexに入ったかなんて憶えていないんですよ。Zentaroもよく言うんですけど、集まるべくして集まった仲間だと思います。10年のうちに離れていったメンバーもいるけど、それでも残ったのが俺たちなんで。昔メンバーで居酒屋に行って、「やったるで〜!」とか言いながらベロベロに酔って、ストローでマヨネーズを吸ったりしてたなぁ。
KenT:まだ俺がいない頃やと思うけど、そんなことあったん?(笑)
—— それぞれのメンバーがSoulflex以外にも様々な活動を並行していますが、約10年に渡りSoulflexを続けられたのはどうしてでしょうか。
KenT : 音楽をやる仲間というよりも大前提として仲の良い友達で、その延長線上でやっているという感覚だからかな。「友達」というと軽く聞こえるかもしれないけど、いつでも気を遣わずに「飯食いに行こうや」と言えて、尚且つ音楽を楽しく共有できるっていう。俺にとってはこの距離感が普通だから、他のグループを見ていて「スタジオを出たらすぐに解散しちゃうの?」とびっくりすることはあるかも。
Ma-Nu : 確かに、Soulflexはかなり仲が良いんだと思うよ。歳を重ねると無駄なものはだんだん削がれていくけど、それでも一緒に居るんだから、全員がSoulflexの螺旋上にいたんだと思います。
Zentaro : 今の一言はパンチラインやな…悔しい!(笑) 。僕も、全員の音楽に対する熱量や音楽に求めているものが近いから、一緒に居られるだと思います。ぶつかることもありますけど、それは全員が真剣だからこそ起こることで。10年経ってもフレッシュさが変わらないので「もう10年も経つのか」と驚くくらいです。
—— Soulflex以外での活動も含め、他のメンバーの活躍ぶりを見るとどう感じますか?
KenT:「あいつ、いい感じやなぁ!」と思うことはあります。今はSIRUPを近くで見ながら「負けてられないな」と燃えたり、アートで海外に行っているhitchを見て刺激を受けたり。ライバル視とは違うので悔しいわけではなく、純粋に嬉しいですし、自分に活かそうと思えますね。
Ma-Nu:Soulflexにはマイクを持つ人間が3人いますけど、演奏陣も全員がフロントマンっぽいキャラクターを持っているんです。ケンちゃん(Ken-T)はフロントマン以上にギラギラしていてかっこいいなと思います。RaBもフロントマン並みのオーラを持っているのに、ドラマーとしてしっかりバンドを落ち着かせられるところがまた憎い。あとは…俺、メンバーのみんなが笑っていると嬉しくなります。あいつらには悲しんでほしくないなと、いつも思う。
Zentaro:また良いこと言ったな〜、ずるい(笑)。 僕は2人と少し違って、自分の活動を見たみんなをあっと言わせたいタイプなので、逆にメンバーの飛躍を見るのは悔しいです。例えば、ZINが別のトラックメイカーと素晴らしい楽曲を作ったら、そこに関われなかったことを悔しく思うし。そう感じる僕と、素直に喜べるMa-NuやKen-Tがいて、全体のバランスがとれているんだと思います。
—— 昨年の3月から12月にかけて、Soulflexは毎月連続で新曲をリリースされました。このプロジェクトがスタートしたきっかけを教えて下さい。
Zentaro:一昨年に、Soulflexの今後について深く話し合う機会があったんですよ。曲を作るわけでもライブをやるわけでもないし、「このまま続けてどうするのかな?」と思っていた時期で、僕が半年間くらいSoulflexから距離を置いたんです。そんな中Soulflexは僕がいない状態で2曲リリースして、「来年Soulflexで何か仕掛けたいからZentaroも一緒にやってほしい」と言ってくれて。応えない理由がなかったので、また彼らと一緒に音楽をやろうと思いました。
KenT:Zentaroをもう一度振り向かせたくて作った2曲だったので、俺たちの意志を示すことができて、Zentaroが応えてくれました。「じゃあもう毎月新曲を出すくらいの気持ちでやっていこう!」ということで、昨年の連続リリースプロジェクトが始まったわけです。
—— 関西在住のメンバーが多いとはいえ、個々にそれぞれの活動がある中、どのように楽曲制作を進めていますか?
KenT:SoulflexのブレーンはZentaroなので、次はどういうテイストでいこうとか、そういった指針はすべてZentaroが決めてくれています。「この曲のサックスはこんな感じでお願いします!」というオーダーが来て、メンバーそれぞれが応えていくという流れです。
Ma-Nu:歌詞のテーマとそれぞれが歌う箇所もZentaroが指定してくれることがあるんですが、僕は最初に歌詞を書くのが苦手なので、できるものならSIRUPかZINに任せたかったりします(笑)。なぜかというと、僕はある程度決められたルールの上でやるほうが得意なタイプなんです。僕らはヒップホップ / ソウルに影響を受けているものの、Soulflex自体の音楽性がそういったジャンルだけに特化しているわけではないんですよ。表現できるものがどんどん増えていくからこそ、トラックが出来上がってまっさらな状態で「どうぞ!」と言われると、自由であるが故に迷ってしまう。だから、誰かが先陣を切ったパートを受けて自分のパートを作るほうが気楽かもしれません。ルールのないSoulflexの音楽は、何曲書いてもフレッシュに感じますよ。
Zentaro:僕は音楽オタクだし妄想癖があるんですけど(笑)、Soulflexのライブをフロアから観ることが多くて、「この曲の次はこういう曲があったらいいなぁ、作らなきゃ」という妄想をしながら観ています。彼らは歌や演奏が言うまでもなく達者で、実現できるものが多いから、例えば僕が野球の投手だとしたら色んな球を投げるんですけど、絶対に打ち返してくれます。
——昨年の連続リリースプロジェクトで配信された楽曲を、2つのEPに分けて再パッケージし、それぞれに2曲ずつの新曲を加えた “Collected 1”と“Collected 2” がリリースされました。このEPのために新たに制作された新曲について聞かせて下さい。
Zentaro:“Collected 1”に収録した新録曲の“Free Ya Mind”は、この曲で初めてミュージックビデオを撮るという前提で作ったので、自己紹介になるように僕らのスタイルが簡潔にわかるサウンドを心がけました。ミュージックビデオも僕らのナチュラルな空気感が伝わるように、日常の中で音楽と戯れている様子を映像で表現しています。“Collected 2”にも新曲を2曲収録しましたが、“Like It”では“Free Ya Mind”とはまったく違うSoulflexを楽しんでいただけると思います。
Ma-Nu:Zentaro、SIRUP、ZIN、俺のLINEグループがあるんですけど、“Like It”が出来上がった時は、みんなが「やばい曲やな!!」と興奮していましたね。
KenT:デモの段階からライブがイメージしやすかったので、これから演奏するのが楽しみです。
ーCollected 1から[Free Ya Mind]
ーCollected 2から[Like It]
—— この2つのEPを提げ、10周年を目前に初のワンマンライブを開催されることが発表されました。筆者を含め、たくさんのファンがこの日を待っていたと思います。
KenT:メンバーの中では、僕やRaBがライブなどの動きに関して率先してアイデアを出すタイプなんですが、「これまで自分たちでたくさんイベントを打ってきたけど、ワンマンライブに挑戦してみようぜ!」と言ったらみんなが乗ってくれました。長尺のライブをしたことがないので、先に経験しているSIRUPを参考にしたりして、時間の使いかたを工夫したいなと思っています。とにかく、良いライブになることは間違いないです。
Ma-Nu:一昨年にSoulflexがバラバラになりそうになって、踏みとどまって昨年毎月新曲を出して、今年の末に初めてワンマンライブをやる。すべてが自然に繋がっている気がするので、良い意味で「満を持しての集大成 = ワンマンライブ!!」という大々的な感じでもないのかなと。
—— どんなときも気負うことなく、自然体のまま心地いい音楽を届けてくれるSoulflexですが、10周年を迎える来年以降は、どんなふうに楽しませてくれるのでしょうか。
KenT:今年は早い段階でSoulflexの年間スケジュールを立てていたので「昨年の楽曲をまとめてパッケージでリリースしましょう」「ミュージックビデオを撮りましょう」ということが整理できていたし、来年の10周年に向けても今から色んな準備をしています。“Collected 1” “Collected 2” やミュージックビデオのおかげで、これまで以上にたくさんの方にSoulflexが広がっているので、僕たちの拠点は関西ですがもっと色んな地域に行くチャンスがあると思います。今年以上にライブを積極的にできればいいなと思っています。
Zentaro:もっと多くの人に知ってもらいたいという欲求はもちろんありますが、そもそも「自然に」やっていけるのがSoulflexの良さなので、それを保っていきたいです。プロフェッショナルでありたいけど、音楽へのピュアな情熱は持ち続けたい。SoulflexにはSIRUPのようにオーバーグラウンドで活躍するメンバーもいれば、生活の一部として音楽をやっているメンバーもいて、さまざまな距離感で音楽と接しています。音楽を志す誰もが、これを本業として稼がないといけないとは思わないし、それぞれの方法で楽しめば良いと思います。それを僕たちなりのやりかたで、少しでも多くの人に示したいです。
Soulflex
2010年、個々にそれぞれの活動していたアーティストたちが、Mori Zentaroの呼びかけにより集まり、大阪にて結成。以降、アートとの結びつきやメンバー間のコラボレーションを多く取り入れた「MILESTONE」、食と音楽の繋がりを意識し飲食店とコラボレーションする「DELISIOUSTIC」など、様々なイベント企画からライブ活動、Soulflex名義での作品制作まで、インディペンデントな活動を行う。
Official Site https://soulflexofficial.tumblr.com
Instagram @soulflex_crew
Twitter @soulflex_crew
RELEASE Information
Soulflex 『Collected 1』
01. City Resort
02. Testimony
03. Addiction
04. 24
05. Melt (新曲)
06. Free Ya Mind (新曲)
07. All Good
Label:Soulflex
Soulflex 『Collected 2』
01. Awake
02. Like It
03. Integral
04. In Fragments
05. Honeysuckle
06. Abundant (era)
Label:Soulflex
Soulflex 『Free Ya Mind / All Good』
ー7inch analog 2019.12.18 Release
A1. Free Ya Mind
B1. All Good
Label:Kissing Fish Records
Cat.No.:KMKN51
LIVE Information
Soulflex One Man Live
“Free Ya Mind”
2019年12月18日(水) Open 19:00 / Start 20:00
@大阪・梅田 Shangri-la
ADV. ¥3,500 / Door ¥4,000
TICKET
ぴあ(Pコード:156-282) / ローソン・チケット(Lコード:53469)
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