2016.05.14 Sat
#Hyogo
【連載】
乱痴気 前川拓史の兵庫じばさんぽ。
vol.02 杉原紙
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表、前川拓史さんが兵庫県内の民工芸の地場産業を訪れ紹介する連載企画。今回は、小雪舞い散る北播磨、多可町加美区の“杉原紙”の産地へ訪問です。
杉原紙 Taka-cho Sugiharadani
兵庫県のほぼ中央に位置する 多可町の北部、杉原谷で作られる和紙。 兵庫県の重要無形文化財・ 伝統的工芸品に指定。 奈良時代からはじまった、 約1300年のなが~い歴史と 伝統を持つ和紙です。
『好と漉』
一回目に訪問した播州織の産地より車で北上すること約30分。神戸市内から約2時間、訪れた先は、杉原紙研究所。 丁度、寒い時期に行われる、和紙の原料“楮(こうぞ)”の“黒皮とり”と“川さらし”に巡り合えました。
黒皮を包丁で削り取り、内側の白皮だけを残し、杉原川の冷たい水に一日浸した後、雪、風、日光、冷たい外気にさらすことで、より白く美しい和紙になるそうです。(写真の)“黒皮とり”をする浦部さんは神戸出身。デザインの勉強をしていた大学時代に訪れた京都で、伝統的な京唐紙に衝撃を受けたのが和紙との出会いとのこと。大学卒業後は岐阜県の和紙の産地、美濃市で職人として働いた後、杉原紙の産地へ。と言っても、ひょっこりやって来たわけではなく、役所の偉いさんに手紙を書き、何度も直談判を繰り返した末に、ようやく移住し働けるようになったのだそうです。
杉原紙が完成するには、楮を育てるところから始まり多くの工程を経て一年掛かります。出来上がった杉原紙を使って、浦部さんがライフワークにしているのは、切り絵の杉原紙カレンダーの製作。一年を通して飾るカレンダーを一年がかりで制作するそうで、和紙の製作に一年、切り絵づくりに一年、出来上がったカレンダーを毎月めくって十二月の頁を見届けるのに三年の月日を要するのです。長い年月が経つうちに黒皮剥ぎに使う最初は角張っていた包丁も、手にすっぽり収まる形に馴染んでいました。
最近流行りの田舎暮らしに憧れるのも解かりますが、せめて包丁が手に馴染んでくる3年先を見据えとかな、あきませんね。浦部さんは、和紙が好きって純粋な気持ちと、覚悟みたいな強い気持ちを持ち合わせているように僕には映ります。単に、「紙漉(す)きが好き~」だけではないんですよね!
杉原紙カレンダー ¥3888 / じばさんエレ
和紙職人、浦部さんが切り絵で表現したかわいらしいイラストが特徴。
切り離すタイプのカレンダーではないので、絵の保存もできます
前川拓史
神戸のセレクトショップ「乱痴気」代表。 2008年から、兵庫県内の地場産業と一緒に物づくりをする「兵庫じばさん」プロジェクトをスタート。 2013年には、地場産業を扱う「じばさんエレ」をオープン。
じぱさんele
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