2017.11.04 Sat
#Shimane

大しめ縄を作る町で出会う食と人。
島根県飯南町への旅〈3〉
出雲大社神楽殿の大しめ縄を作る、飯南町。これまでのレポートでは、あの巨大な大しめ縄がいかに丁寧に長い時間をかけて作られているか、また日本の原風景が残る町並みを自転車散策するなど紹介。(前回記事・前々回記事) 最後は、食に関して。ただ、おいしいだけじゃない、面白い、「こんなとこに、まさか!!」と驚く超意外な一面をご紹介します。
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かわいすぎる田んぼ
アイガモ農法「カモしゃん米」
オーガニック系のレストランで出されることの多い無農薬のお米の中でも生産過程がとにかく「かわいい!」のがアイガモ農法。田んぼ脇に合鴨の子供を飼育して害虫を食べさせ、雑草が生えるのを防ぐことで、無農薬の稲穂を育てられるのがこの方法。ふつうの米作りよりおよそ8倍は手間がかかる。
この農法でお米を作っている農家が飯南町頓原にある宇山智明さんの田んぼ。田植えを終えて5月のGWあたりに業者から購入した小さな子鴨は5月の盆あたりまで田んぼ飼育される。毎日朝に鴨を田んぼに開放し、夕方に小屋に入れる。この期間に田んぼに訪れれば可愛いカモの姿を見られるだけでなく、手に取って一緒に写真撮影なんかも可能だ。
アイガモ農法で稲作する宇山さんの田んぼ
田んぼの脇に小鴨の小屋が作られている。寒暖差が激しいので夜は白熱電球を焚いて温かくしてあげる。カモの飼育も結構手間がかかるそう
5月から8月初旬までこんなかわいいカモが田んぼで遊んでいる
大人になると飛んでしまうだけでなく、今度は稲穂を食べだすため8月中旬には終了してしまう。今回も、カモを一目見ようと訪れたが終了直後で「カモはもういないよ」と連絡を受けた。落胆しながら田んぼを訪れてみたが…。なぜかカモが田んぼのあぜ道を歩いていた。「あれ!? いてるやん」
ガアガアと鳴きながらあぜ道にカモを発見!
逃げるカモ。速くを捕まえないと、田んぼの稲を荒らすんだそう
追いかけるとすぐに飛び出してしまった。カモいた、しかも3匹も…。宇山さんいわく「あのカモたちは逃げ出した分だけ。また、捕獲しなきゃいかんけんね」と我先に逃げ出したカモの捕獲作業に忙しそう。そんな中、罠にかかったというカモを見せてもらえることに。こんなに間近にカモを見られるなんて初めて~とテンションアップ。
かわいい~美人さんや~。「大きくなったカモは捕獲した後どうするんですか?」「何匹かは近所でさばける人がいるからあげるけん。あとは業者が引き取って、料亭とかに行って誰かに食べてもらってる」
「えっ・・・・」
優しそうな宇山さん。カモの捕獲に忙しそう
毛ツヤのいいメスのカモどこかおびえている。丁寧に扱われているがこの後業者に引き取られる….
私たちは生き物の命をいただいていることを身に染みた瞬間だった。ちなみに宇山さんの農家はいつでも見学可能。カモしゃん米も直接電話すれば購入できます。
アイガモ農法 カモしゃん米
島根県飯南町頓原892
Tel:0854-72-0827 ※直接問い合わせにて購入可
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超サイケデリック!
名産品「舞茸」の製造工場に潜入
飯南町の名物舞茸その製造工場に特別に潜入することができた。キノコと言えば親しみのある食材だけれど、それがどうやって育っていくのかは知らなかったので興味深い。実際訪れてみると、その様子はかなりサイケデリックだった。
キノコの栽培方法は木の粉末をブロックにしたものにキノコの菌を入れる。そして、湿度や温度が保たれた部屋に保管しキノコが育つのを待つのだが。その現場はもうキノコのナイトクラブ。
温度と湿度をしっかり管理していないとうまくキノコが育たないそう
暗い青いライトの中を進む。ここはもう舞茸が舞うキノコのナイトクラブだ
紫の袋に包まれたブロックからニョキニョキとキノコが生えている。キノコってこんな風にできてるんだ!
いっぱい並ぶブロック。等間隔できれいに栽培されている
湿度管理もしっかりしないと美味しいキノコは作れない
コチラはキクラゲ
一つのマイタケを完成させるのには約1か月かかる。「もうわが子のような気分です」と担当者。キノコ一つでもこだわりと手間だけでなく、思いが込められているのだ。 この舞茸を乾燥させたのが乾燥マイタケ。長期保存でき、手軽に水で戻せるのも魅力。
ブロックからニョキとキノコが出てきている。言葉にできない不思議さ
ビニールに包まれたマイタケの子供。また小さい。ここからうまく成長できるかは温度や湿度管理にかかっている
立派に育った舞茸。大きいし、なんかかっこいい!
乾燥マイタケはお土産ショップなどでも購入可能
奥出雲そば処
一福 本店
常に行列ができている一福は出雲大社前にも支店があるがこの飯南町が本店。本場の出雲そばを食べれるだけでなく、地元の食材を使った定食なども食べられる。もちろん、マイタケ天ぷらの蕎麦もぜひ食してほしい。
マイタケ天ぷらをのせた出雲そば
国道54号線沿いに構える出雲そば処 一福。常に行列ができている
奥出雲そば処 一福
島根県飯南町佐見977
Tel:0854-72-0277
10:30〜19:30(土日祝は20:00まで)元旦休
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スイーツがおいしい
ラムネミルク堂
大しめなわ創作館がある道の駅頓原にあるのが、ジェラートやドーナツなどのスイーツを提供するラムネミルク堂。出雲の牛乳を使って作ったジェラートはハイクオリティ。一番人気は生乳のおいしさを存分に引き出したフレッシュミルク。2番は飯南町独自の高所、寒暖差が生み出す甘いサツマイモを使ったやきいも味。大しめなわ創作館があるだけに、クロワッサンをしめ縄に見立てたしめ縄アイスサンドも必見。
カップもコーンも選択可能。おススメはミニアイス3段重ね税込520円
クロワッサンをしめ縄に見立てたしめ縄アイスサンド
ラムネミルク堂の店内はイートインスペース。雑貨販売や観光案内も充実している
アイスクリームは〇種類の中から選ぶことができる
ラムネミルク堂
島根県飯南町花栗48(道の駅とんばら)
Tel:0854-72-1720
9:00〜17:00
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野花の咲く宿 若林
この他にも、いろいろなローカルなご当地グルメを提供するお店があるが、やはり最後に紹介したいとおもったのは今回の宿となった「野花の咲く宿 若林」の御飯。山菜やお漬物など地元の野菜を使っているだけでなく、注目したのは代々、大切に使われてきた食器。古伊万里や青い印判のお皿なんかは、大正以前。こうして使われてきたものを大切にしていく「心」がいい。こんな心意気に触れられる。これってできそうでできない旅なのだ。
赤い本漆の御膳セットに盛り付けられた手料理は絶品
印判の小皿に盛り付けられた夏野菜はみそだれでいただく
ぜんざいが出てきたのは出雲がぜんざい発祥の地だから
朝食も野花が飾られる中、山菜中心。美味しいお米と水でいただく
有田焼の基泉の小皿と古伊万里っぽい豆皿
きれいな和室に野花が生けられていた
野花の咲く宿 若林
島根県飯石郡飯南町頓原1141-1
Tel:0854-72-0304
宿泊:1日1組限定(要予約)
料金:大人(中学生以上)6,700円【税込・1泊2食 / 温泉チケット付】
小学生 5,000円【税込】 幼児 無料
www.oideyo-shimane.jp/122
3シリーズに渡って紹介した飯南町。いかがでしたか? 来年2018年7月ごろには出雲大社神楽殿大しめ縄の架け替えが控えているので、今からもう大しめ縄づくりは始まっています。ぜひ、一度訪れて、その温かさや人、この町でしかできない「旅」を楽しんでみて。
Report / Yukako Okada
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