2017.10.21 Sat
#Shimane
大しめ縄を作る町をサイクリング!
島根県飯南町への旅〈2〉
出雲大社神楽殿の大しめ縄を作る飯南町。前回は大きなしめ縄がこれほどまでに多くの人々の手作業で丁寧に「心を込めて」作られる様子を紹介(前回記事はこちら)。今回はその飯南町がどんなところか散策。同町が力を入れる自転車に乗って町巡りもしてみた。
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実は今回、飯南町を訪れたのは「やまなみ街道クライムライド」という超本格的な自転車イベントが開催されたためだ。筆者、実は飯南町訪問は今回で5回目。内3回は自転車イベントなのである。コンパス読者にとっては、こういった本格的な自転車イベントは珍しいだろう。
今や全国数千か所で自転車イベントが開催されているが、今回のイベントは最長140kmと全国トップクラス。人間って140kmも自転車で走れるの? とかなり超人的だ。
やまなみ街道クライムライドは本格的な自転車ライダーが集まるイベント。スタート地点の「道の駅」赤来高原
こんな長い坂道を延々10kmとか登ったりする。全国トップクラスの過酷さ
自転車イベントを主催するだけあって同町にある「道の駅」赤来高原では本格的な自転車のレンタサイクルがある。しかも「クロスバイク」というスポーツ仕様で利用料金が1000円という安さにも驚き。(通常 2500~3500円)。カラーバリエーションも豊富だし、かっこいい自転車で街巡りを楽しめるなんて最高だ。
どんな町でもその土地を存分に楽しみたいなら地方をやっぱり自転車! 都心を離れて旅をするなら、その地域がどんなところか、肌で感じたい。くまなく見たいし、いろんなところに出向きたいのが本望。でも、徒歩だと行ける範囲は限られるし、車だと簡単に止まれない。
その点自転車は自分の足で、風を切って、いろいろなところに行ける。環境にもいいと自転車の良さを力説するが・・・。 今回はうぐいす茶屋から巡った飯南町をお届けしよう。
「道の駅」赤来高原
島根県飯石郡飯南町下赤名880-3
9:00~17:00 水曜休
Tel:0854-76-2007
レンタサイクル
利用時間:9:00~17:00
料金:1000円 ※3日前までに要予約
Tel:0854-76-9050
www.satoyamania.net/event/2017/07/post-16.html
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まず目に飛び込んでくるのは山陰地方独特の石州瓦の日本家屋。かつて、良質な銀がとれた石見銀山がある島根県。どこの山にも鉄分が多く含まれ、川には砂鉄が多く流れている。土にも多く鉄が含まれており、これで作った瓦は赤く、冬は寒さが厳しく、積雪になったときの凍害を防ぐんだそう。
石州瓦の日本家屋と稲穂が山陰らしい
この瓦はこの地域の伝統的なもので、新しめの家々に石州瓦が使われているところを見ると、景観や伝統を大切にしているようにも思われる。「昔から変わらない風景なんだろうな」と美しい景色を眺めつつ、ふっと現れるレトロなものの出現にも心がくすぐられる。
レトロな小学生の人形、年季が入っている
いろいろな自転車イベントを走っているけれどこれだけ、ゆっくり町散策できるのは久しぶり。飯南町は戦国時代から江戸時代にかけて石見銀山から取れた銀を運ぶ経由地。当時は馬で運ばれ、同町にある赤名峠で疲れた馬を交代させていた。広島県・尾道に運ばれた銀は海運によって全国に運ばれていた。その到着地を代表するのが東京の「銀座」なんだとか。
比丘尼塚古墳の看板を見つけた
戦国時代と言えば昨年、近江八幡をレンタサイクルで巡った。石見銀山検分役をしていた大久保長安ら戦国武将も馬でこの地を訪れまた、大阪や京都、滋賀ともつながっていくから面白い。それでも、道を走るとそれよりももっと歴史がさかのぼる比丘尼塚古墳を見つけた。道路もないような時代にお墓を作った人々がいる。石を重ねて洞窟のようになった古墳は7世紀ごろに作られたそう。
7世紀に造られた古墳。約1300年もの間、ここに存在していたのだから感慨深い
秋の収穫直前だったため、田んぼには丸々と大きな米を実らせた黄金色の稲穂。とても空気が澄んでいるから、吸えば吸うほどデトックスされているよう。ここには排気ガス、たばこの煙、人混みは皆無、聞こえる音は小鳥のさえずり、木々が当たる音、「のどかだな~」
田園風景が広がる。赤い屋根が「THE 山陰」って感じ
もうすでにここは公共バスもなく、電車もなく、あるのはただただ、自然ばかりだ。それでも近未来的な表情をのぞかせるシーンもある。冬場は積雪があるため道路を守るためのスノーシェルターという存在だ。ここだけ見たら、超未来的。
標高が高いから空が広い~
近年、こういった地方を巡るサイクリングは「里山サイクリング」と呼ばれることが多い。要するに田舎を巡ることだけれど、その土地土地で表情が違う。自然や緑の質の高さとか日本の文化や伝統、自然が継承されているかも重要なところ。飯南町は90%が森林で飯石森林組合という組織がその森林を守り、活かす取り組みをしている。森を作り、守ったり、キノコとか作ったり、クマやイノシシとか鳥獣対策したり、土砂や崖崩れとかの対策したり・・・。
いきなり目の前に白い花が現れた。「こんにちは~!」って言ってきてるのか。それとも「やっほー♪」なのか。でも、絶対話しかけてきてる!
いわば自然と「共生」しているということ。だからこんなにも緑がきれいなんだなーと感心。人と共生できているのか森林たちも人懐っこいのだろうか、小道を走っていたら、話しかけてきた! といっても、たまたま走っていた目の前に花のツリーが現れたんだけれど。ちょうど目線の高さに降りてきていたのだ。何ともかわいらしい白い花。夏の青い空をバックに揺れる木々たちの緑。この風景・・・いい!
森が話しかけてきた小さな道を抜けると飯南町らしい風景に入るが、それは田園風景の中。透明度の高い小川に稲穂が揺らぎ、穏やかでゆったりした時間が流れる。「日本の原風景」にふさわしい風景。かつては、年貢が税金だったから、日本中はどこもかしこも、今よりもっとお米作りが重宝されていたんだなあ。この美しい日本の風景が、空気や水がいかに大切であるか。とちょっと自問自答。
このまま54号線に出て右に行けばゴール地点の赤来高原、左に行けば道の駅「頓原」がある。ちょっと行けば富原の町並みにも触れられる。
まっすぐと伸びる富原の町は、何かどこか独特
頓原と言えば、前回のレポートで紹介した大しめなわ創作館があるところ。「道の駅」頓原、は全国に1117か所ある道の駅の第2号。そして、この頓原から54号線を下って次の駅がなんと第1号の道の駅「掛合の里」で。せっかくなので、道の駅発祥の地を紹介しよう。
じゃん! 道の駅発祥の地第一号「掛合の里」
掛合の里が「道の駅」第一号。地元の野菜とかが売られているイメージだが「道の駅」は本来、ドライバーの休憩や食事をしたり地元土産のPR、緊急災害時には避難場所になったりもする地域コミュニティの場でもある。 ちなみに掛合の里がある掛合町は元内閣総理大臣、竹下登の出生地。掛合の里には竹下登の像があり、すぐ近くには竹下酒造もある。この日は休みだったが酒蔵見学も可能で竹下登資料館もあるので訪れてみほしい。
たまたま、盆明けのお祭り直前での掛合町メイン通りは旗で飾られていた。そのため思わぬ写真を撮影できたのが嬉しい。山陰の奥地にある小さな町でありながらも、五穀豊穣を祝うお祭りが行われているのを肌で感じる心温まる風景にほっこり。
掛合町(かけやまち)の町並み。盆明けにお祭りの準備がされていた。ここは旧出雲街道なんだとか
赤来高原でレンタサイクルを返せば、汗もかいているので温泉。地方のサイクリングを楽しむキーワードは「自然、グルメ、温泉」。宿は「野花の咲く宿、若林」。地元のおばあちゃんの家の一室を宿として使っていて、先でも述べた石州瓦のおうちに泊まれる。実はこーゆー旅が一番、したかった。現地そのものを感じ、地元の人と交流できる。新しい出会いや発見があると生活が豊かになる。
野花の咲く宿 若林
島根県飯石郡飯南町頓原1141-1
Tel:0854-72-0304
宿泊:1日1組限定(要予約)
定休日:無休ラムネ温泉の休日 第一、第三木曜日
交通手段:国道54号より車で約5分
料金(税込み):大人(中学生以上)6,700円【1泊2食 / 温泉チケット付】
小学生 5,000円 幼児 無料
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若林さんの宿のお風呂は頓原ラムネ銀泉。送迎してくれるがせっかくなので歩いてすぐにあるラムネ銀泉という源泉の温泉に行った。ポテポテ散策がてらだが、ちょうど夕日の沈み時。刻一刻と風景が変化する。
久しぶりにこんな風景を見た
いつも思っていたけれど、この町は忘れかけていた「何か」を思い出す。小さいころに何度も何度も見たジブリの映画「トトロ」のラスト。さつきが妹のメイを探し走り回るシーン。田舎の風景の中をひたすら走るその風景ってこんなだった。おそらく夏休みの後半だから時期も一緒だ。
ゆっくりと動く雲の動きに、沈む夕日が照らす稲穂と草花
夕日に照らされて輝く「ヒメムカシヨモギ」ちょこちょこと現れる自然の中の小さな美しい発見がたまらなくうれしい
いっぱい走って、温泉入っておなかすいた。さて、次回ラストは飯南町の「食」。美味しいだけじゃない、「超サイケデリック!!??」と「可愛すぎる!?」飯南の食をお届け。
Report / Yukako Okada
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