2016.08.05 Fri
#Hyogo
【連載】
乱痴気 前川拓史の兵庫じばさんぽ。
vol.05 丹波布
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表、前川拓史さんが兵庫県内の民工芸の地場産業を訪れ紹介する連載企画。今回は、嬉涙の“丹波布”へ訪問です。
丹波布 Tanba City
江戸末期から明治まで、佐治地域(現丹波市青垣町)周辺の農閑期に織られていた、当時は縞貫や佐治木綿などと呼ばれていた織物が発祥。時代と共に衰退しましたが、昭和に入ると、柳 宗悦氏に価値を見出され復興しました。
『輪と凛』
神戸から六甲山を越え舞鶴若狭自動車道を北へ1時間、春日ICから西へちょい。訪れた先は丹波市青垣町にある『あおがき丹波布工房』さん。丹波布は、綿から手紡ぎされた糸を、栗の渋皮やこぶな草など天然の草木で染め、緯糸に絹のつまみ糸を入れて、手織りで仕上げられています。
ざっくりとした素朴な縞柄が特徴です。明治の終わりまでは、農家の閑散期に織られていましたが徐々に衰退していたところ、昭和の初めに民藝運動の第一人者、柳 宗悦氏が京都の朝市で見つけ「静かな渋い布」と称したことで保存会が発足しました。現在は、今回訪問した大谷とみ江さん達に受け継がれています。
今では色々な形で丹波布を継承される人達がおられますが、僕が「先生」と、お呼びする大谷とみ江さんは、日本舞踊でならしていた若かりし頃に、たまたま雑誌で見かけた丹波布に魅かれ、地元京都の呉服店を探し回りましたが見つからず、ずっと心残りだったそうです。その後、大恋愛の末、嫁がれてきた青垣町が丹波布発祥の地と知り、自分で織りたいという思いが日々積もっていたところ、ご主人さんの「地の人がやらなどうすんねん!」の一言に背中を押され、丹波布伝承館で伝習生一期生として丹波布を学び織り始めたそうです。
糸車を回して綿から糸をつむいでいく。強い糸を作るのはかなりの技術が必要
機織りの作業。カタカタと見事な手つきで、リズミカルに織られていきます
その過程には色々なご苦労があったと思うのですが、全てを楽しそうに笑いながらお話してくれる先生。訪問した晩夏は、ちょうどタカサゴユリが満開の時期。先生は工房の向かいの崖に咲く、一輪のユリを指さして、「“ド根性ユリ”って私が名付けたのよ」と大笑いしていましたが、絶壁に根を張り見事に咲き誇る一輪のユリと、凛とした先生の立ち姿が僕には重なり合って映りました。
丹波布を詳しく知りたい方は、春日IC降りてすぐの道の駅あおがきにある『丹波布伝承館』へ。丹波布が完成するまでの工程をわかりやすく教えてくれる展示コーナーがあるので、オススメです。
ロカリナの丹波布ランチョンマット¥5832~
/ じばさんele 神戸国際会館SOL店
『あおがき丹波布工房』が手がけた丹波布をランチョンマットに。
前川拓史
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表。2008年から、兵庫県内の地場産業と一緒に物づくりをする「兵庫じばさん」プロジェクトをスタート。以来、毎週のようにあらゆる産地を訪ねている。
じぱさんele
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