2017.06.18 Sun
#Hyogo
【連載】
乱痴気 前川拓史の兵庫じばさんぽ。
vol.11 赤穂緞通
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表、前川拓史さんが兵庫県内の民工芸の地場産業を訪れ紹介する連載企画。第10回の今回は兵庫県と岡山県との県境、赤穂市にあるNPO法人赤穂緞通を伝承する『会花工房』へ訪問です。
赤穂緞通 Akou City
赤穂緞通は、鍋島緞通(佐賀県)、堺緞通(大阪府)と並ぶ 日本三大緞通と呼ばれ、 江戸末期に一人の女性により考案。
試行錯誤の末、明治初期に商品化に成功。しかし昭和の初めに綿糸不足と機械化により、 赤穂緞通は衰退の一途を辿った。
『折と織』
赤穂と言えば赤穂浪士と塩が有名ですが、緞通(ダンツウ)って何やと思います? 聞きなれないワードですよね。緞通とは、いわゆる敷物、絨毯です。今回訪ねた、NPO法人赤穂緞通を伝承する会花工房の井関さんは、元々は他府県出身で赤穂元禄郵便局の局長をされていました。そこから、目にした一枚の古い織物、赤穂緞通に魅せられて、気がつけば赤穂緞通を継承する最後の職人さんが機を織る小屋の前に立っていたそうです。何とも古びた小屋の扉を開けると後光の射した赤穂緞通が眼に飛び込み、その瞬間、私が継承しなければ赤穂緞通が滅びてしまうと、とっさに感じたそうです。
そこから即行動がモットーの井関さん、仕事の合間を縫っては、足しげく職人さんの元へ通い緞通を習い始め、そして、とうとう緞通に一生を捧げようと決意し、郵便局を早期退職。改めて赤穂緞通織方技法講習会に一期生として参加し、緞通三昧の日々を過ごしたそうです。 ただ、赤穂緞通を継承しようにも当時は設備も資料も何もない状況。兎に角、赤穂緞通があると聞けば古い家を訪ね歩き、緞通の柄を方眼紙にメモを取り資料をせっせと作ったそうです。
緞通が究極の手仕事と言われる所以は、図案から使用する色糸選びに始まって、道具の手入れまで、全ての工程を1人の織り手が手作業で行うからです。手仕事の見せ場は、文様を際立たせるために“腰折れ鋏”と言う独特の角度に曲がった握り鋏でチョキチョキと音を響かせ念入りに摘み取る作業。その作業には大変な技術と手間がかかるために仕上がる緞通の数は大変少ないのです。
今でも迷った時は、95歳の師匠を訪ね緞通話に花が咲き、二人ともに元気が出るそうです。使い込まれ踏み締められても文様が型崩れしないのは、腰折れ鋏で溝を付け文様を立体的に見せる赤穂緞通独特の技法だからです。井関さんも、たとえ腰が折れても織は続けて赤穂緞通を守って下さいね。
前川拓史
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表。2008年から、兵庫県内の地場産業と一緒に物づくりをする「兵庫じばさん」プロジェクトをスタート。以来、毎週のようにあらゆる産地を訪ねている。
じぱさんele
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