2017.02.09 Thu
#Hyogo
【連載】
乱痴気 前川拓史の兵庫じばさんぽ。
vol.09 豊岡杞柳細工
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表、前川拓史さんが兵庫県内の民工芸の地場産業を訪れ紹介する連載企画。第9回の今回は兵庫県最北の都市、豊岡市『豊岡杞柳細工』へ訪問です。
豊岡杞柳細工 Toyooka City
但馬の地で生まれ、但馬の風土に育まれてきた杞柳細工。江戸時代、京極伊勢守高盛が豊岡に地を移してから柳の栽培と加工技術を保護し、販売にも力を入れたため産業として発展。全国に豊岡の柳ごおりの名を広めました。
『編と舞』
豊岡杞柳細工は2000年の歴史を持つ伝統工芸品。“柳行李 (やなぎごうり)”って言い方が分かりやすいですかね。軽くて丈夫、 通気性も良いから、昔は衣類を保管したり、旅の荷物を運ぶ際に重 宝され、「鞄のまち豊岡」の礎を築いた工芸品なんです。中でも、僕 が衝撃を受けたのは“飯ごうり”。おにぎりや冷や飯を詰めて持ち歩く、 昔の弁当箱である“飯ごうり”は、飯を詰めたまま熱湯に浸して湯を 切ると、炊き立てみたいにホカホカの温かい飯に戻るという優れも の、昔の魔法瓶みたいなもんなんですね。
そんな品がいっぱい売れていて一大産業として成り立っていた頃 は、『やなぎを育てる人』『材料にする人』『編む人』『染める人』みた いに分業制になっていたそうですが、今は職人さんが全ての工程を 一人でされています。職人さん、伝統工芸士さんって聞くと、厳つい おっちゃんを思い浮かべるかもしれませんが、杞柳細工職人さんの ほとんどは女性。僕がずっとお世話になっている、小西さんは伝統 工芸士の資格を取られて9年目というベテランさんです。初めてお 会いした籠編みのワークショップで僕が一目惚れ、口説き落として 一緒にモノづくりがスタートしました。やなぎの中でも、コリヤナギとい う素材は、強靱でしなやかな風合いと柔らかさ、粘りがあります。素材 と一緒で、見た目はしなやかで柔らかい立ち振る舞いの小西さんで すが、心は強靭で粘り強いのです。
そんな小西さんのセンスが磨かれるのは、長年続けられている水 泳や最近始めた社交ダンスなど趣味を持って生き生きと日々を過ご されているからです。だけど、編んだり染めたりと楽しい作業の反面、 夏の暑い盛りにやなぎを育て、冬の寒い時期に刈り取る作業は、毎 年々ホンマに大変やと思います。けど、「止めたいなんわ~」なんて 言わんとって下さいね。僕は、社交ダンスのパートナーにはなれませ んが、やなぎを刈るぐらいは、手伝いますので、籠づくりのパートナー にご指名ください。そして、まだまだ現役で“編と舞”を見せて下さいね。
西脇市の地場産業“播州織”で製作した内袋を採用し、持ち手には<ルースターキング>によるカーヴィングが施されたスペシャルな一品。
¥38000(税抜) / じばさんELE国際会館SOL店
前川拓史
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表。2008年から、兵庫県内の地場産業と一緒に物づくりをする「兵庫じばさん」プロジェクトをスタート。以来、毎週のようにあらゆる産地を訪ねている。
じぱさんele
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