2016.10.18 Tue
#Hyogo
【連載】
乱痴気 前川拓史の兵庫じばさんぽ。
vol.07 丹波焼
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表、前川拓史さんが兵庫県内の民工芸の地場産業を訪れ紹介する連載企画。第7回の今回はそろそろ紅葉が見ごろになる篠山市は“丹波焼の郷”、今田町へ訪問です。
丹波焼 Sasayama City
丹波焼の郷は、篠山市の西南端に位置し、緑豊かな自然に恵まれた地で、800年以上にわたり現在に伝え、約60の窯元が軒を連ねています。 瀬戸、信楽、越前、常滑、備前と並ぶ焼物の産地で昭和の初め、柳宗悦の眼力によって日用雑器として見出されて、世に知られるようになりました。
『岐と帰』
僕が初めて丹波焼の郷に訪れたのは、確か5年前のちょうど今ぐらい。『兵庫じばさん』をスタートさせて、「これからどうしょうかな?」と岐路に立たされていた頃でした。そんな時、郷をブラブラしていると、〈丹波立杭伝市窯〉と書かれた作業場の軒先に突然現れた、山積の植木鉢。グッと興味を惹かれ、恐々引き戸を開けて中をのぞき込むと、ちょうど作業を終えたばかりの市野達也さんが居られ「どうぞ~」と気さくに声かけてくれて、薪ストーブに当たりながら丹波焼の話をしてもらいました。勝手に僕がイメージしていた“陶芸家=頑固者”とは裏腹だったのが良かったのか悪かったのか、これを機にどっぷり丹波焼にハマってしまい、今では月2回のペースで郷に訪れています。
再三郷へ訪れる中で、時には酒を酌み交わし、郷に泊まって話し込んでいくと、自然と窯元の皆さんは、僕のことを「シャチョ」と呼んでくれます。「社長」ではなく、あくまでも「シャチョ」です。僕はこのニックネームがすごく気に入っていて、すごく親しみを感じています。僕は、逆に窯元さんたちを家族のように「おとうさん」「おかあさん」、そして郷のある今田町は清水さんと市野さんの姓が殆どなので、年下の人達には君付けで呼ばせてもらって、〈俊彦窯〉の俊彦さんに至っては、弟子でもないのに「師匠」と呼ばせてもらっています。
丹波焼の郷に来ていつも感じることは、焼物を製作する背景には家族が有り、その家族構成も様々で父息子、母息子、夫婦、家族総出であったりと、家族が協力している姿です。なんだか、ほのぼのとしていて温かみのある感じが大好きで、なんとなく家族によって各窯元さんの特色も出ているように思います。
僕が丹波焼の郷を後にする夕暮れ時になると家々から夕飯の支度のエエ香りが漂ってきます。「タローくん家はカレーか」とか「マサトシくん家は焼き魚やな」など家族団欒の姿が想い浮べながら帰路につきます。そして、また次に丹波焼の郷に帰ってきた時は、窯元さんの引き戸をガラガラと開けて心の中で「ただいま~」と呟いています。
丹波立杭伝市窯
丹波焼で唯一、植木鉢に特化した窯元。市野達也さんと達也さんのお父さん・お母さんの3人による親子2代で営んでいます。
ココチ舎
市野雅利さん夫婦が営む手づくりの温かみのあるお店。丹波焼の郷の日々の生活を、器を通して紹介している仲良し夫婦です。
丹波源右衛門窯
伝統的な糠釉の鎬の器等の民藝作品を作陶するお父さんと、丸いフォルムを中心とする愛らしい表現を用いて伝統の丹波焼に新風を呼びこむ太郎さん。
丹窓窯
柳宗悦、濱田庄司らと親交があった先代の故市野茂良さんは、バーナード・リーチの工房で修行されスリップウェアの技術を身につけられました。現在は奥様の茂子さんと娘の公子さんが、器を作り続けておられます。
俊彦窯
河合寛次郎の弟子である生田和孝に師事し民藝の流れを汲む窯元です。鋭い眼光で登り窯を焼く清水俊彦さんは素朴でありながら洗練された日常使いの器を作陶されておられます。
丸八窯
お母さんの久美子さんと息子の義久さんの轆轤(ろくろ)が仲良く並んでいます。ここの焼き物は、黒の発色が特に美しいです。
前川拓史
神戸を代表するセレクトショップ「乱痴気」の代表。2008年から、兵庫県内の地場産業と一緒に物づくりをする「兵庫じばさん」プロジェクトをスタート。以来、毎週のようにあらゆる産地を訪ねている。
じぱさんele
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