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2017.10.14 Sat

#Kyoto

「村上淳」スペシャルインタビュー<br>アパレルのこと、役者のこと、そして

「村上淳」スペシャルインタビュー
アパレルのこと、役者のこと、そして

#インタビュー#ポップアップ#村上淳#藤井大丸

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30オーバーにとっては“ムラジュン”として、10代や20代にとっては若手俳優・村上虹郎の父として、銀幕デビューから20年以上が経った今なお、あらゆる世代から支持される村上淳。そんな氏が、去る9月に開催された『藤井大丸』7階フロアの10周年アニバーサリーイベントにして、自身が手掛ける<SHANTi i>のポップアップショップ『tag Me Tender』のため来京。俳優業に対する想い、そしてファッションデザイナーとしての矜持をフランクに語ってくれた。

 


 

 

人とやってる以上そのことを大事にしたい
俳優もアパレルの仕事も
それが感じられないことは避けたい。

 

 

インタビュー・文 / 堀川佳男(トライアウト) 撮影 / 塙 新平

 

 

スクリーンもスマホもテレビも
雑誌の表紙も4分の1ページも
WEB媒体も全部等価、イーブン。

 

 

-関西は結構頻繁に来られているんですか?

 

「20代前半の頃は大阪にDJでよく行ってました。最近は全然ですね。京都は2、3ヶ月前にも映画の撮影で来ました。今回もそうですけど、仕事が終わってホテルの部屋に戻ってからは全然外に出歩かないんですよ。ぼけっとしているか、インスタ見て過ごしてます」

 

 

 

-それは意外ですね。部屋で映画を観たり本を読んだりされないんですね。

 

「映画は、以前は年間700本くらい観ていました。自宅ではなく映画館で。ただ今は観てないんですよ。ん~、いくつか理由があるんですけどね。俳優の目線でいうと、これまでスクリーン目がけて生きてきたけど、40歳くらいの時にある瞬間に『あっ』と思ったことがあって。スクリーンもスマホもテレビも、雑誌の表紙も4分の1ページも、WEB媒体も全部等価、イーブン。すべてを同じ位置付けとして捉えた時に、仕事にしても日々の言動にしても無理がなくなったというか。それにインスタグラムの登場以来、メディアというものがさらに飽和状態になりましたよね。例えば雑誌の4分の1であろうが10分の1ページであろうが、スマホでアップにして撮って、それを誰かがポストしたら表紙と同じ。逆に表紙も誰かがインスタにあげれば、他のワンポストと全く同じなわけで。それはどういうことかというと、僕ら表現者は人に見られないと全くもって無価値なんです。たとえば僕がやっている<made in GM japan>よりカッコいい、クオリティも高いブーツを作っているブランドは、おそらく日本にいっぱいあると思うんです。だけど売れてますか? って。カッコいいことやってるんだ、自分たちが信じてるもの作ってるんだって言葉にするのは簡単だけど、売るというのはすごく難しいんですよね。ただ、かといって売ることだけを目的に、お金のために生きてきたことは全くない。それが前提にある人ととは、多分一緒に仕事できないんじゃないですかね」

 

 

 

3日間のイベント限定でリリースされたTシャツは、アメリカ産のコットンを丸胴仕様にし、一度両脇を裁断したものを再び4本針で縫い上げた<SHANTi i>のオリジナルボディを使用。裾には5ブランドそれぞれのタグが付き、希望者にはムラジュンさん自らがステンシルプリントを施すというスペシャルな一枚

 

 

 

ムラジュンさんのこれまでのアートワークが大胆に描かれた<tr.4suspension>のMIX UP Tシャツ各¥8100

 

 

 

 

 

 

こっちのエゴを押し付けない。
『良ければどうぞ』
そんな性格をしてる。

 

 

-97年に<SHANTi i>を立ち上げられて、ちょうど10年後の07年に新たなブランドをスタートされました。このブーツに特化した<made in GM japan>を始めたきっかけは何だったんでしょうか。

 

「アパレルに飽きたから。ん~、やっぱり軸足がどっぷり役者なんで、世の中が求めていないからといって、はいそうですかと辞めることはないんですよ。けど、アパレルは飽きたら辞めりゃいいじゃんって。逆に芝居に飽きるということはない」

 

 

 

-アパレルに関しても、俳優業と同じくご自身と正直に向き合っているからこそ一度休止し、離れられたんですね。では、今回の『藤井大丸』7階フロアのポップアッシュショップ『tag Me Tender』に関して、どういった経緯で決まったのでしょうか

 

「僕、これまで誰かにアプローチして何かを仕掛けるみたいなことは、個人レベルではあったとしても今回のような企業レベルでは全くなくて。オファーをいただいた時、面白そうだなっていう感覚よりも、あ、これはやれるなっていうイメージが先に思い浮かびましたね。今回のコンセプト、ひらめいたアイデアというのは、ちょうど去年のシーズンに<WTAPS>の白いモッズコートを買って、それにWTAPSはもちろん、別のブランドのネームタグも自分で縫い付けていたんです。デザイナーや代表に『タグ1枚もらえませんか?』って相談して。もともとカスタムが好きということと、タグに対して特別な感情を抱いていて。やっぱりブランドのスピリットであり、ある種の顔でもあるわけだからそこに手を抜くブランドなんてないでしょ。なので今回のオファーをいただいた時も、その延長として“tag Me Tender”という言葉がパッと出てきて。そこからすぐ頭に浮かんだのが<Porter Classic>の克さん、<FPAR>のテツくん、<WOLF’S HEAD>の幹田くん、<TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.>の宮下くん、そして僕と一緒に<made in GM japan>をやっている仙台の村上久典(注:村上淳氏とは<tr.4suspension>、<SHANTi i>、<toast>でも協業)。この5人なんです」

 

 

 

今回のイベントのタイトルであり、ポップアップショップのネームでもある『tag Me Tender』をプリントしたTシャツ&ロンTも販売

 

 

こちらが<SHANTi i>のイベント限定Tシャツに使われていたステンシルのプレート。『藤井大丸』の屋上にてムラジュンさんがスプレーで吹きつけていた

 

 

 

-以前から親交がある方ばかりなんでしょうか。

 

「親交なんて言葉じゃ生ぬるいですね。克さんは僕が20代の時に人生を救ってくれる言葉をかけてくれた人で、テツくんとは15歳からの付き合い。幹田くんとは昔よく飲み歩いていた時期があって、あの時間は今でも僕にとっての宝。宮下くんに関しては、ファッションデザイナーという点において彼に敵う人間はいないですね。前々から一緒に何かやろうねって言っていて。村上は僕が欠落しているエディット能力が非常に高い」

 

 

 

-そうだったんですね。それに今回のイベントでは、村上さんが手掛ける<SHANTi i>が10年近くの歳月を経て復活しました。今お話いただいたブランドのネームタグを使ったコラボTを3日間のポップアップショップ限定で販売されています。

 

「<SHANTi i>は久々の復活と言われてますけど、水面下では1年くらい前から動いていたんですよ。初動に時間をかけないと僕らももうオッサンだし、若い頃のようにブランドやろうぜイエーイみたいなことだと持たなくて(笑)。たとえば今回リリースしたTシャツのボディも、かなり時間をかけて作りました。村上久典も僕も限られた時間のなかで取り組んでいることもあって、とにかく時間がかかっちゃうんですよ。すごくクイックに、パッとひらめいてすぐにカタチにできているのはプリント主体の<tr.4suspension>。<made in GM japan>は映画の制作みたいなスパンですね。工程も時間軸も映画みたいで、ひとつの作品を作るのに優に1年。これだとひらめいて動き始めて、オーダーを取ってお客さんに届くまでには、さらに8ヶ月はかかる。まぁ今回のイベントの話をすると、さっき言ったやれるなって感覚と、このメンツとこのメンツと一緒に移動する“京都大作戦”だと考えると、これは面白そうだなっていう実感はありました。でも、一番大事にしなきゃいけないのってお客さんだと思うんですよ。来てくれるお客さんを大事にするっていうのは、やっぱり映画界で叩き込まれたんで。どこの業界でもそうだと思うけど、こっちのエゴを押し付けない。僕はもともと『良ければどうぞ』っていう性格をしてるんです」

 

 

 

 

 

 

制作の工程において「映画みたいなスパン」と語っていた<made in GM japan>のブーツ。木型や革、製法に色の選定と、妥協知らずの渾身のモデルのみをラインナップ

 

 

この秋新たに始動する<toast>の第1弾アイテムとしてリリースされる“jam”各\19440。クラシックスニーカーに見られるバルカナイズ製法をベースに、現代の技術によってミニマルな造形美へと昇華

 

 

 

-そのエゴを他者に押し付けないというのは、俳優とデザイナー両方のお仕事に共通されているんですね。

 

「はい。それに今回、『藤井大丸』さんからこういう機会をいただいて、まさにさっき話していたのは5年後にこういうビジョンがあってこういう企画をやりたいですって。そのために精一杯やらせていただきますっていう。明日の3日目もお店にいますけど(注:このインタビューはイベント2日目に実施、僕の力なんて大したもんじゃないなぁって。『藤井大丸』さんや僕を支えてくれるブレーンみんなの力ですもん。別に謙虚に言ってるわけじゃなくて、大したことないって笑っちゃうくらい。だから本当にありがたいなぁって思いますよ」

 

 

 

-“人”を大事にするというのも、さっきおっしゃったどの業界、どの仕事でも同じかもしれないですね。

 

「一番シンプルな表現をすると、支え合うというよりも高め合いたい。キャリアとかスキルとか収入じゃないですよ。そりゃ収入欲しいですよ。欲しいけど、何ていうのか悟空みたいなもんですよ、『ドラゴンボール』の。おめえツエーな、みたいな。そっちの方が人生ワクワクするじゃないですか。最初は亀仙人に精一杯だったけど、最後は魔人ブウに勝つわけでしょ? 僕もそれの繰り返し、次から次ですよ。人とやってる以上そのことをすごく大事にしたい。俳優もアパレルの仕事も、それが感じられないことは避けたい。それだけですね」

 

 

 

村上 淳  Murakami Jun
枚方で生まれ幼少期は豊中で過ごし、小学校低学年から東京へ。スケボー、DJといったストリートでの活動と並び、16歳からモデルや俳優のキャリアをスタート。これまで100本以上の作品に出演。ブランドのデザイナーとしても活躍し、現在は休止を経て復活した<SHANTi i>、<made in GM japan>、<tr.4suspension>、さらに今シーズンスタートのスニーカーとサングラスに特化した<toast>と、4つのブランドを手掛ける。

 

 

tag Me Tender タグ ミー テンダー
9月16日(土)~18日(月・祝)
at. 京都・藤井大丸 7F ギャラリースペース

 

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