2019.10.13 Sun
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『カメ止め!』に続く『スペシャルアクターズ』! 上田慎一郎監督インタビュー
ごぞんじ映画『カメラを止めるな!』で一躍、時の人となった上田慎一郎監督。続く劇場長編映画第2弾の公開がついに。そのタイトルは『スペシャルアクターズ』。ノンスターな役者を起用した“芝居”の芝居、そしてメタ・フィクションの応酬と予測不能な展開! と『カメ止め』を彷彿とさせるネタバレ厳禁の群像劇。きっと観たものを饒舌にさせるザッツ・ドタバタ・エンターテインメントな1本だ。それにしても今作のプレッシャーは半端なものじゃなかったのだそう。教えて! 上田監督!
STORY
緊張すると気絶してしまう売れない俳優・和人が、数年ぶりに再会した弟から、芝居でなんでも解決する俳優事務所『スペシャルアクターズ』に誘われる。ある日、そんな俳優事務所に旅館を守って欲しいという依頼が舞い込み、彼らはカルト集団に立ち向かう。
ーまず『カメラを止めるな!』の大ヒットで監督ご自身になにか変化はありましたか?
そうですね、劇的に。仕事のオファーが増えて忙しくなりました。それにテレビに出たり、街で声を掛けていただいたりすることも。いろいろと変化はありました。でも、自分はあまり物欲とか旅行に行きたいとか、そういうのがないので生活に変わりはないですけどね。
ー今作『スペシャルアクターズ』制作へのプレッシャーはいかがでした?
『カメ止め!』の頃は次作に関してプレッシャーはなかったんですね。というのも、その時は目の前のことに必死でプレッシャーを感じている暇がなかったんです。でも制作に取り掛かったときに突然のしかかってきました。まったく(脚本が)書けなくなりました。
映画「スペシャルアクターズ」より
ー途中で脚本を止めた、と。
『カメ止め!』を超えなきゃとか、似ないようにしなきゃとか、逆に似せた方がみんなが喜ぶのかな?とか、とにかく頭の中が『カメ止め!』の呪縛に囚われてて、それを振り払うのに時間がかかりました。どんどんクランクインの時間は迫ってるのに、散歩ばかりしていたり。ほんとに気絶しそうなくらいのプレッシャーでした。家族やスタッフに助けられました。
ーしかし、その“気絶”が今作『スペシャルアクターズ』の主人公のキャラ設定に活かされている、と。
台本の初稿が上がったのはクランクインの1ヶ月前で、その時にはまだそのキャラ設定はなかったんですね。台本を詰めていくときに細かい設定を決めていきました。だからもう作りながら決めていった感じですね。今回はキャストみんなと話し合う時間が取れたので、そこでアイデアをまとめたり。最終的に点と点が線になるように。
ー“芝居でなんでも解決する”という今作の具体的なアイデアはどこからでしょう?
『カメ止め!』以前から企画のストックがたくさんあるんですけど、その中に『ドラマティックメイカーズ』という企画がありまして。日常の中でドラマを作って商売をしている人達、というストーリーで。
ー今作のベースとなるような設定ですね。今回のキャストはワークショップから選ばれたそうですが、無名の役者さんが出演するというのは『カメ止め!』と共通しています。
たまたまなんです。ワークショップの企画から映画を作っていく、というその第2弾なだけで。今後も有名な役者さんは使わない、というわけではないんです。
ーでは、今作の役者さんはどういった観点で選ばれましたか? カルト集団ムスビルの教祖(淡梨)など、今作もさらに“いい顔”の役者さん揃いです。
男女や性別、芝居が器用な人や不器用な人、いろんなバランスも考えて、最強のチームを作るつもりで選んでいます。演技経験が浅い人も多いです。主人公の大澤(数人)くんは役者になって10年間でまだ3本くらいしか芝居の仕事をしたことないんです。最近まで親にも自分が役者をやっていることを言ってなかったらしくて。
ーほとんど今作の主人公のキャラクターと同じような?
そうなんです。そんな彼が今回いきなり主役に抜擢され、この映画は全国150館くらいで上映されるんですけど、その猛烈なプレッシャーを背負って、実際に気絶しそうになりながら、気絶しそうな芝居を続ける、という。
ーストーリー上でのキャラと実際の役者のキャラが重なっている、と。
だから今作は彼のドキュメンターでもありますね。
映画「スペシャルアクターズ」より
ーそう聞けば、この映画の見方がまた変わってきますね。今作も『カメ止め!』のようにライブ感を重視されているように思うんですがいかがです?
現場まではフィクションとしての強度を高めておいて、現場ではそれを崩すというかライブ感というか。現場ではドキュメンタリーを撮ろうと思っています。
ーなるほど。現場ではドキュメンタリー、と。そういえば、この映画の宣伝ビジュアルは『カメ止め!』に続き、監督の奥様でもある、ふくだみゆきさんが担当されています。監督は宣伝プロデューサーも兼任されていますが、このビジュアルはどんな方向性を意識されました?
メジャー映画でエンタメ系だと実写のビジュアルが多いんですけど、絵で、っていうのはあんまりないんですね。アメリカのB級映画だとよくあるんですね。B級エンタメ・ジャンル映画というような。邦画のビジュアルってもっと文字がいっぱい入っているんですが、なるべく文字の情報を無くしましたね。このビジュアルだけだとストーリーもなにも分からないんですが、なんだろう?って前のめりにさせるものにしたかったんです。
ーではちょっと変な質問なんですが、もし監督が監督でなかったら、この映画をどう評価すると思います?
最高の映画やん!(笑)と。もし映画監督を目指していたら悔しい!と思うと思いますね。やっぱり自分の観たい映画を作る、という気持ちで作ってますし。でも、撮っている時は夢中で撮っているので、客観視できない時があって。だから編集段階でもいろんな人に観せて意見をもらっています。
ー客観的な感想を聞く、と?
どこが退屈だったか?とか分かりにくかったか?とかを聞いて修正したり。映画の中でどれくらい情報を与えるか? どれくらい情報を与えないのか? というのは重要だと思っていて。情報を与えなくても、どれくらい伝わるのか? その辺りは細かくチェックしますね。正解を絞らずに、見る人に想像や解釈の余地があった方がいい。でもエンターテインメントとして、どういうこと? ってならないようにしないといけない。その塩梅を探る感じですね。
ーこれから『スペシャルアクターズ』を観る方にメッセージをお願いします!
観た人同志ですごく語り合える映画、になれば嬉しいです。だから、観ないと語り合えないのでぜひとも観てください!というところですね。『カメ止め!』の時も最初は、この映画はドタバタ・コメディで前半・後半ありますよ!って内容を言ってたんです。でも(ネタバレしないように)お客さん側がどんどん情報を制限していったんですね。それに僕らも教わったところがあるので、今回は最初からあまり情報を出さないように、ですね。
ー話は変わるんですが、監督は滋賀県のご出身ですよね?
滋賀の長浜市で。ほんとに田舎だったので映画館も電車で一時間くらいかかるところで。でも友達のお父さんがVHSの映画をいっぱい持っていて借りて観ていましたね。日本語吹き替えのB級映画ばかりを浴びるように。
ーあらためて関西の思い出といえば?
今の自分のすべてというか、いろんなものが詰まってますね。高校卒業して大阪、日本橋にも一年間住んでましたし。お笑いも大好きなので駅前でビラを配ってホールを借りて漫才したり。高校卒業する時には吉本に行くか?映画の道に行くか?迷ったくらいなので。新喜劇もオールザッツもめちゃくちゃ観てました。ダウンタウンの影響も大きいですね。漫才やったり、夜通し大喜利をやったり(笑)。今も変わってないかもしれませんが、学生時代はいかにオモロいことをやるか、そればっかり考えてましたね。
ー最後に今後の目標を教えてください!
自分たちの会社(PANPOCOPINA)を作ったんですけど、ピクサーみたいな制作会社を日本で作りたいな、と考えていて。3年くらいかけて1本の映画を制作するような。何パターンもシナリオを作って検証したりして。実写で次々に最高のエンターテイメントを送り出す、そういう会社を作れたらな、と思います。
ー映画以外では?
うーん、映画を作ることが趣味であり仕事であり…。個人的な目標は…「もう少し太る」くらい?ですかね(笑)
上田慎一郎 / 映画監督
1984年生まれ、滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2009年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。2015年、オムニバス映画『4/猫』の1編『猫まんま』の監督で商業デビュー。妻であるふくだみゆきの監督作『こんぷれっくす×コンプレックス』(15)ではプロデューサーも務めている。「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンに娯楽性の高いエンターテイメント作品を創り続けている。劇場長編デビュー作『カメラを止めるな!』は動員数220万人以上、興行収入31億円を突破し、2018年の最大の話題作となったことは記憶に新しい。本年8月16日に中泉裕矢、浅沼直也との共同監督作『イソップの思うツボ』が公開。
映画「スペシャルアクターズ」
10月18日(金)大阪ステーションシティシネマほか全国ロードショー
監督・脚本・編集・宣伝プロデューサー:上田慎一郎
出演:大澤数人 / 河野宏紀 / 淡梨 / 三月達也 / 津上理奈 / 小川未祐ほか
©松竹ブロードキャスティング
公式サイト
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