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2019.09.29 Sun

#Osaka

気鋭ブランド『DAIRIKU』の魅力に迫る! デザイナー岡本╳スタイリスト渕上╳rroomm安田のスペシャル対談(後編)

気鋭ブランド『DAIRIKU』の魅力に迫る! デザイナー岡本╳スタイリスト渕上╳rroomm安田のスペシャル対談(後編)

#DAIRIKU#rroomm#インタビュー

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アメリカンヴィンテージに敬意を払いつつ、ファニーなエッセンスを巧みにブレンドする新鋭ブランド<ダイリク>。弱冠25歳の若きデザイナー・岡本大陸さんをはじめ、彼が絶大な信頼を寄せるスタイリスト・渕上カンさん、そして18AWから取り扱いをスタートし、親交を深める『ルーム』のバイヤー兼スタッフ・安田卓弘さんに集まってもらい座談会を開催。

 

後編では大陸さんの服づくりのルーツを探りつつ、19AWコレクションのアイテムについて語ってもらいました。

 


 

 

岡本大陸 / DAIRIKU OKAMOTO

1994年生まれ。バンタンデザイン研究所ファッションデザイン学科の在籍中に自身のブランド<ダイリク(DAIRIKU)>を立ち上げ。2016年には「Asia Fashion Collection」のグランプリを受賞し、2017年秋冬コレクションをNYのファッションウィークで発表。ブランドコンセプトは「ルーツやストーリーが感じられる服」。

 

 

 

渕上カン/ KAN FUCHIGAMI

数多くのアーティストをはじめ、<ダイリク>のルックブックや広告、雑誌など多岐に渡り活躍するスタイリスト。その傍らバンタンデザイン研究所 大阪校のスタイリストコースの講師も務める。また自身のセレクトショップ『パッシム』もイレギュラーで運営。

 

 

 

安田卓弘 / TAKAHIRO YASUDA

関西を代表するセレクトショップ『ルーム』でカリスマ的人気を誇るショップスタッフ。販売のみならず、バイヤーとしても活躍する。ショップの10周年を記念したエクスクルーシブもしこたま準備しているそう。

 


 

<DARIKU>のルーツって?

 

 

―ファッションに目覚めたのはいつですか?

 

岡本大陸(以下、大陸):高校生ですね。好きな子を振り向かせるために服を買いに行ったのが最初(笑)。それから雑誌を読むようになって、地元の奈良からアメ村の古着屋や三角公園へ毎日のように通ってました。それぞれ違ったスタイルの友達ばかりだったし、僕自身もいろんな服装をしていたのでその頃の経験が今のデザインに影響を与えています。

 

ー古着以外にブランド物も好きだったんですか?

 

大陸:好きでした。当時はドメブラが流行っていて、<クリスチャンダダ>、<ドレスドアンドレスド>なんかを買ってました。あとは『コンテナストア』の前身となる『イチネンボウズ』ってブランド古着の店によく通ってましたね。<コム デ ギャルソン>や<ラフシモンズ>のアーカイブがあって、それから<ラフシモンズ>にハマりました。

 

渕上カン(以下、カン):ジャンル問わずハマる時期ってあるよな。

 

安田:最初に服を作ったのはいつ?

 

大陸:思い返すと恥ずかしいんですけど、高校生の頃に友達とファッションショーをしていて。当時はイチからデザインできなかったので、リメイクして衣装を作ってました。本格的につくり始めたのは、バンタンの大阪校に入学してからです。

 

カン:ルーツは高校生の頃なんや。

 

大陸:そうですね。バンタンでつくった服を知人の古着屋で展示会をさせてもらってたんです。当時はしっかりとしたブランドではなかったんですが、自分のつくった服に対しての反応が見れる貴重な経験でした。結果的には大阪校は3年で卒業して、そのあと上京してブランドを設立する授業を受けるためバンタンの東京校に1年間通ってました。

 

安田:カンさんは昔から大陸くんのことを知ってたんですか?

 

カン:名前は知ってた。僕はバンタンでファッションプロデュースコースの特別講師してて、大陸はデザイナーコースで違う科やってんけど、“大陸”っていうブイブイ言わせてる学生がいるぞって噂は回ってた(笑)。

 

 

安田:流石!(笑)

 

大陸:いやいや、そんなことないですよ(笑)。カンさんと親しくなったのは、東京に来てから。3日連続でばったり会ったのがきっかけなんですよ。

 

カン:あれは運命的やった! 最初は渋谷スクランブル交差点。人混みの中で見つけて、「よー」くらいの感じ。次の日に原宿のプラザ前の横断歩道でまた会って、ちょっと半笑いで会釈して。3日目が中目黒の小さい横断歩道。流石に3日連チャンで会ったら、そらテンション上がるでしょ(笑)。関西出身の2人がこんな大都会で会うなんて奇跡やと思うわ。

 

安田:運命としか言えないですね(笑)。

 

大陸:本当にそうですね。それから週3で会うようになって。ただ、銭湯かカレーしか行かないですけど(笑)。

 

カン:完全にルーティンやもんな(笑)。

 

大陸:でも上京したての頃だったのですごく心強かったです。カンさんに会ってなかったら、今頃どうしてたんだろうって思うくらいなんで、感謝してもしきれない存在です。

 

カン:それは言い過ぎやわ(笑)。

 


 

 

妥協のないものづくり

 

 

―大陸さんとカンさんの知られざる上京ストーリーも飛び出しましたが、ここからは19AWシーズン“アメリカンドリーム”について聞かせてください。映画『アメリカン・グラフィティ』がモチーフとのことでしたが、ラジカセや真っ白のエアフォース1など、随所にヒップホップ的な要素が散りばめられている気がしました。

 

大陸:まさにラッパーの成り上がりをイメージしています。なのでスタイリングもヒップホップに寄せてもらいました。

 

カン:そうそう、ルックを見てストーリーを感じてほしくて。成り上がる前はくたびれたマンションでルーズな服装していて、成功後は高級ホテルでスーツを着てたりするんです。小物のスニーカーなんかも成り上がる前はちょっと汚れてて。パッと見たら分かんないですけど、細かいところまで意識してます。

 

安田:そんな裏テーマがあったんですね! そういう小ネタがオトコ心をくすぐるんですよ。

 

カン:なんせ服のバランスが良かった。ヒップホップすぎないというか、大陸のフィルターを通してるからどこか上品なんですよ。

 

―そこまで細かい考え込まれてるとは思わなかった……。その話を聞けて良かったです。お二人が今シーズンのアイテムで気に入ったものはありますか?

 

 

カン:僕自身、山のように服を見てきた自負があるんですが、単純に大陸の服が好きで展示会に行くとどれを削るか悩むくらいなんですよ(笑)。昔から気に入ったアイテムは二色買いするんですが、今シーズンはこのブレスがそうでした。機能性がデザインに反映されているものが好きなんで、これは留め具のサイズを大きくしていて。そこにひと目惚れでしたね。

 

大陸:でも展示会に来てくださったときに、端から端まで「これええな」って言ってくれてましたよ(笑)。

 

安田:僕もこのブレスレッドを見たときにカンさん好きだろうなと思いました。むしろ、これ寛さんがつくったんちゃう?って(笑)。

 

大陸:以前からアクセサリーをつくりたいなと思っていたので念願のアイテムです。このシリーズは継続していきたいですね。

 

 

ダイリクの別注ロゴカットソー ¥22,680

 

 

安田:僕的にはやっぱり『ルーム』の10周年記念でつくってもらった別注のロンTですね。カラーリングも最高ですし、フロントの刺繍も初心を忘れないようにってことで「YOUTH」と入ってて。その下も「2009 AUTUMN/WINTER」と、オープンした年が落とし込まれてるんです。

 

カン:絶妙な色合いやんね。これは一瞬でなくなりそう。

 

安田:このシリーズは毎回早いです。あとはこのカバーオールですね。丁寧につくり込まれていて、これからヴィンテージになっていきそうなオーラがあります。

 

大陸:3本ステッチやカンヌキ、チンストなど、古着の細やかなつくりをリスペクトしていて。僕はそうじゃなきゃ服じゃないと思ってるんです。シーズンによってつくりたいモノの気分は変わるんですけど、つくるんであれば常にベストを尽くしたいという思いは一切変わらないですね。

 

安田:どのアイテムも妥協しないもんね。

 

大陸:できないですね。僕自身、デニムが昔から好きだったんで、ずっとつくりたいと思ってたんです。学生時代にイチからつくるために古着を見て研究したんですけど、肩と袖口で縫い方が変わっていることに気付いて。これは自分ではつくれないなと思い、岡山のデニム工場に見学しに行ったりしてました。数年後にそのことをカンさんに話したら岡山の工場を紹介してもらって、ずっとお世話になっています。

 

安田:このカバーオールもそのデニム工場で?

 

大陸:そうです。これもワンシーズンに数百着くらいつくってるんですが、30代の職人さんが一人で縫ってくれてるんです。

 

安田:え、一人で?

 

カン:それは知らんかった。だから良いんや!

 

 

大陸:人気の職人さんなので他にもいろいろ抱えてるんですが、ワガママを言ってその方にお願いしているんです。僕の服の特徴を把握してくれてるので、その方以外にはなかなかお願いできなくて。デニム生地はどうしても硬いので、下手に縫うと動き辛くなるんです。鋭角の襟や袖口とか難しい部分も完璧に縫ってくださるんです。

 

安田:だから<ダイリク>のデニムはストレスなく着れるんやね。

 

カン:普通ってパーツごとに職人がいて縫い合わせいくもんね。

 

大陸:その方が効率的ではあるんですが、10年20年と着続けてほしいので細部までこだわりたいんです。ウォッシュをかけたり刺繍を加えたり、毎シーズンどこかディテールを変更してリリースしてるんですが、年々アップデートしていってますね。

 

安田:改めてモノづくりに対するこだわりがすごい。

 

 

―ここの第三ボタンの部分にホールがあるのに、ボタンがないのはどうしてなんですか?

 

大陸:これは古いカバーオールのディテールによくあるもので、懐中時計のチェーンを留めておくものなんです。今となれば必要ないんですが、「これなんですか?」って会話や古着を調べたりするきっかけになるかなと。自分で調べたらより愛着が湧いたり、服が好きになったりすると思うんです。全てのアイテムがそうではないんですが、面白いディテールは積極的に取り入れてます。

 

安田:大陸くんの服は接客しやすいんですよ。しゃべれるところが多いというか、カッコいいだけじゃない。お客さんと盛り上がれる服って貴重だと思いますね。

 

―確かにそうですね。古着のディテールを取り入れつつ懐古主義にならない現代的なアプローチが魅力です。

 

大陸:ヴィンテージのベースやルーツは大切にしつつ、モディファイしたいと思っていて。「もう少しスリーブが細かったら」とか、「肩パッドいらないのに」とか、自分が古着を着たときの悩みも解消しつつアイデアを加えています。

 

安田:これからがどんどん楽しみになるブランドですね。

 

カン:<ダイリク>は世界を揺るがすブランドになるよ。「調子に乗らんかったら大丈夫」って常に言い続けてて(笑)。何度も言うけど、大陸は人柄がいいんでね。みんなに好かれるんです。

 

安田:謙虚ですしね。

 

大陸:そういってもらえると嬉しいですね。ランウェイからスタートしたブランドなので、いつかまたランウェイを歩きたいですね。そのときはもちろん、カンさんのスタイリングで。それこそ最後の挨拶もカンさんと出たい(笑)。

 

安田:カンさんの方が前出てそう(笑)。

 

カン:流石にそのときは抑えるわ(笑)。

 

―ブランドのルーツから製作秘話、そして今後の展望まで、どれも興味深い話題ばかりでした。これから続々と入ってくる秋冬の新作を楽しみにしています。本日は長い時間ありがとうございました。

 

 

Photo : Hanako Kimura

 

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