2019.03.10 Sun
#Kansai
いまこそヨーゼフ・ボイスを。
時代を挑発する男のドキュメント。
ⓒ2017 zero one film, Terz Film
“すべての人間は芸術家である”。
戦後の20世紀を代表する芸術家、ヨーゼフ・ボイス(1921-1986)のドキュメンタリー映画が大阪、京都、神戸で順次上映される。これはきっと観るものを選ばない、フエルト帽を被ったドイツ生まれの男による旋風を捉えた、いわば冒険譚のようなドキュメンタリーでもある。
邦題では『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』(原題は『BEUYS』)と付けられた本作は、美術の枠組みを拡張する、というボイスの活動の軌跡を通し、彼の思想、“挑発”はいったいどのようなものだったのか?を今に伝える107分間だ。
その思想の実践とは、観客との対話から自由国際大学(FIU)の設立、そして政党「緑の党」からの立候補、7000本の樫の木を植えるプロジェクトまで多岐に渡る。アーティストながら軽々と美術館を飛び出すボイスはアクティビストであり、エコロジストとしても捉えられるだろう。しかし、彼はそれらを含めた活動をアーティストとして“社会彫刻”(社会塑像)と呼んだ。それは未来の社会を変えられる、そこにはすべての人間が参加できる、という信念にもとづいた芸術行為だ。
本作ではその社会彫刻に至るまで、つまりドイツ空軍時代にソ連に追撃され瀕死の重傷を負った出自からの足跡を辿るとともに、ボイスの知られざる人柄までがうかががえる関係者へのインタビューで構成。’84年に来日した様子やその理由なども収められている。
“資本とは貨幣でなく人間の創造性”と語ったボイス。徹底的な民主化と対話に向けられた“挑発”は美術界のみならず、バンクシーのファンのみならず、観るものすべてが汲み取れる大きなメッセージとして現在に新鮮に響いてしまうのでは?
最後に、自身が旗を振る森林保全運動(more trees)ではボイスの影響を受けている? 坂本龍一が本作にこのようなコメントを寄せている。
―――
よけいな説明が少なく、しかも洗練されたサウンドデザインが施されていて、よいドキュメンタリーは、それ自身がアートだと思う。
今まで知らなかった、ボイスの繊細さ、傷つきやすさと真剣さ、夢想家と理性の人という両面を知ることができた。そして「傷」というのがボイスの芸術を解く鍵ではないかということも。
資本主義が終焉を迎えている今、その先を見据えた経済・芸術を唱えたボイスの思考を知る格好のドキュメンタリーだと思う。
坂本龍一 音楽家
(公式HPから引用)
―――
『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』
監督:アンドレス・ファイエル
出演:ヨーゼフ・ボイス、キャロライン・ティズダル、レア・トンゲス・ストリンガリス、フランツ・ヨーゼフ・ヴァン・デル・グリンテン、ヨハネス・シュトゥットゲン、クラウス・シュテーク
配給・宣伝:アップリンク
<上映予定>
3月16日(土)
@第七藝術劇場
www.nanagei.com
4月6日(土)〜4月19日(金)
@京都シネマ
www.kyotocinema.jp
4月13日(土)〜4月26日(金)
@神戸アートビレッジセンター
www.kavc.or.jp
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